「何がしたいか分からない」を抜け出す 立ち止まって自分軸を見つける方法
忙しいあなたが感じる「何がしたいか分からない」という戸惑い
日々の仕事に追われ、気づけばあっという間に時間が過ぎている。そんな中でふと立ち止まったとき、「自分は一体何がしたいのだろう」「このままで良いのだろうか」という漠然とした問いや不安に直面することがあります。特に、仕事に大きなやりがいを感じられなかったり、将来への明確なビジョンが描けなかったりすると、その戸惑いはより一層深まるかもしれません。
情報過多の現代社会では、他者の成功や華やかな生活が容易に目に入ってきます。周囲の基準や期待に応えようとするあまり、自分自身の内なる声が聞こえづらくなり、「何がしたいか分からない」という状態に陥ることも少なくありません。
このような状況は、決してあなたが怠けているわけでも、能力が低いわけでもありません。むしろ、真面目に日々を疾走しているからこそ、立ち止まって自身の内面と向き合うタイミングが来ているのかもしれません。この「立ち止まりたい」という感覚は、自分らしい生き方を見つけるための大切な一歩となる可能性を秘めています。
「自分軸」とは何か、なぜそれが必要なのか
「自分軸」とは、他人の評価や一般的な価値観に左右されず、自分自身が本当に大切にしたいこと、喜びを感じること、納得できる基準を持つことです。これは、あなたの核となる価値観や信念、興味関心、そして得意なことなどが組み合わさってできる、あなただけの羅針盤のようなものです。
自分軸を持つことのメリットはいくつかあります。
- 方向性の明確化: 何を大切にしたいかが分かると、進むべき方向が見えやすくなります。
- 意思決定の円滑化: 迷ったときに、自分軸に照らし合わせることで、後悔の少ない選択ができるようになります。
- ブレない心の構築: 外部からの影響を受けにくくなり、自分自身の選択に自信を持てるようになります。
- 納得感のある人生: 他人から見てどうかではなく、自分がどう感じるかを基準に生きることで、心の充足感が高まります。
「何がしたいか分からない」という状態は、この自分軸が少し見えづらくなっているサインかもしれません。忙しい日常の中で、外側の情報や期待に気を取られすぎ、自分自身の内側にある「大切にしたいもの」が見えなくなってしまっているのです。
立ち止まって自分軸を見つけるための具体的なステップ
では、「何がしたいか分からない」状態から抜け出し、自分軸を見つけるために、具体的にどのように立ち止まれば良いのでしょうか。ここでは、いくつかの実践的な方法をご紹介します。
1. 静かで「何もしない時間」を意識的に設ける
スマートフォンやパソコンから離れ、意図的に空白の時間を作ります。例えば、通勤電車の中でSNSを見ない時間を作る、昼休憩に一人で静かな場所で過ごす、週末の朝に何も予定を入れない時間を持つなどです。この時間は、何かを「考える」ための時間ではなく、ただ「在る」ための時間です。頭の中を空っぽにする練習をすることで、普段は気づけない内なる声に耳を傾けやすくなります。瞑想や軽い散歩も有効です。
2. 自分への問いかけを習慣にする
自分自身に問いかける時間を持つことは、内省を深め、自分軸を見つける上で非常に効果的です。ノートやスマートフォンのメモ機能を使って、以下の問いに対する答えを書き出してみましょう。完璧な答えを見つけようと気負わず、心に浮かんだことを素直に記録することが大切です。
- どんな時に時間があっという間に過ぎると感じるか?
- どんな活動をしている時に「楽しい」「心地よい」と感じるか?
- 逆に、どんな時にストレスや不満を感じるか?
- これまでの人生で、達成感や喜びを感じた経験は何か?それはなぜか?
- どんな人や物事に影響を受けたか?それはどのような影響か?
- お金や時間、他人の評価を気にしないとしたら、何をしたいか?
- どんな社会や世界になったら良いと思うか?(社会課題などへの関心)
- どうしても譲れない価値観や信念は何か?
3. 過去の経験を振り返り、感情を掘り下げる
楽しかった経験だけでなく、辛かった経験や失敗からも、自分の価値観が見えてくることがあります。過去の出来事を振り返り、その時自分がどのように感じ、何を考えたのかを丁寧に思い出してみてください。
例えば、仕事で失敗した経験。「なぜそれが辛かったのか」を掘り下げると、「人の期待に応えられなかったのが悔しかった」のか、「自分の無力さを感じたのが嫌だった」のか、「時間を無駄にしたように感じた」のかなど、様々な感情や価値観(他者貢献、成長、効率など)が見えてくることがあります。
楽しかった経験についても、「なぜ楽しかったのか」を深掘りすることで、自分の喜びの源泉(例えば、誰かを喜ばせること、新しい知識を得ること、一人で集中することなど)が明らかになります。
4. 価値観リストを活用する
心理学やコーチングで使われる「価値観リスト」を参考にすることも有効です。リストにある様々な価値観(例: 成長、安定、貢献、自由、創造性、人間関係、健康など)の中から、自分が「これだ」と感じるもの、あるいは「これがないと幸せを感じない」と思うものを複数選び出し、優先順位をつけてみます。これにより、自分が何を最も大切にしているのかが明確になります。
5. 小さな「好き」や「気になる」を試してみる
「何がしたいか分からない」と感じているときは、大きな目標や「やりたいこと」を見つけようとしすぎる必要はありません。まずは、日常の中で感じる小さな「好き」や「気になる」に意識を向けてみましょう。
例えば、「この本面白そう」「あの場所に行ってみたい」「このスキルを少し学んでみたい」といった些細な興味です。立ち止まる時間の中で、そうした小さな興味を書き出してみたり、実際に短時間だけ試してみたりします。そこから、思わぬ発見があったり、自分の本当に心が動く対象が見つかったりすることがあります。これは、頭で考えるだけでなく、体や感情を通して自分軸を探る方法です。
立ち止まることは「停滞」ではない
立ち止まることに対して、「時間がもったいない」「早く前に進まなければ」といった焦りを感じるかもしれません。しかし、ここでご紹介したように、立ち止まることは決して後ろ向きな行為や停滞ではありません。むしろ、目的地を見失ったまま走り続けるよりも、一度立ち止まって羅針盤(自分軸)を確認し、本当に進みたい方向を見定めるための、非常に生産的で前向きな「ブレーキ」なのです。
自分自身と丁寧に向き合う時間を持つことで、漠然とした不安の正体が明らかになったり、自分が本当に大切にしたいものが見つかったりします。それは、あなたがあなたらしく、納得感を持って日々を歩むための確かな土台となります。
まずは一日数分でも良いので、意識的に「立ち止まる時間」を作ってみてください。そして、今回ご紹介したような問いかけや方法を、あなたのペースで日常に取り入れてみましょう。そこから、あなたが探し求めている「自分らしい生き方」へのヒントがきっと見つかるはずです。